導入
シミュレーションをする際に正規分布を仮定して正規分布から乱数を発生させているが、これは様々な文献によって、株式や投資信託などは正規分布におおむね従うためということが言われているためです。
しかし、レバレッジをかけてあっても本当に正規分布に従っているのでしょうか?
今回はそれを確認してみます。
TECLチャート
免責事項
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方法
米国の上場投資信託TECLのデータをGoogleスプレッドシートのGoogle Finance関数を使って抽出。
(使用データ 2008-12-17 ~2021-09-03)
月末の日付と終値だけのデータを「R」で抽出してデータフレームを作成。
月末の終値から、前月比率(n=153)を算出し計算に用いる。
平均値、標準偏差は前月比率の値153個の当該期間の最後の月末終値/当該期間の最初の月末終値から算出し利用する。
・検証方法
1. コルモゴロフースミルノフ検定により数値的に正規性を評価する。
2. ヒストグラム、箱髭図、散布図、QQプロットの4点から視覚的に正規性、等分散性について評価する。
3. 正規分布による乱数生成(標本から平均、分散を算出する)
4. F検定により、標本分布と生成した分布の等分散性を評価する。
5. student-t検定により標本分布と生成した分布の平均の差があるかを評価する。
なお、有意水準は5%とするが、今回は計3回検定を行っているため多数の偽陽性(第1種の過誤)が生じるのを避けるべく、ボンフェローニ補正法により0.0167%(有意水準/検定数)を適応する。
結果
1. コルモゴロフースミルノフ検定
両側検定におけるp値は0.3952 と 0.0167を超えており、帰無仮説の「正規性である」ということは棄却はできない。そのため、正規性がないとは言えない。
2. ヒストグラム、箱髭図、散布図、QQプロット
ヒストグラムの形状から正規分布のようにも見える。プロットからも逸脱はあまり見られない。箱髭図から、中央値の偏りはないように見える。散布図からも、データに大きな偏りはないように見える。
3. 正規分布による乱数生成(標本から平均、標準偏差を算出)
乱数生成するための分布のサンプルサイズは標本と同じにして、標本から算出した平均と標準偏から正規分布に従う乱数を発生させた結果をヒストグラムにして並べた。出現頻度は異なるが、範囲や形状は似ているようにも見える。
4. F検定により、標本分布と生成した分布の等分散性を評価する。
両側検定におけるp値は0.5928と0.0167を超えており、帰無仮説の「分散に差はない」ということは棄却はできない。そのため、等分散ではないとは言えない。
95%信頼区間においても、 0.6662713 ~ 1.2614088 と母分散比が1をまたいでおり、差がないだろうと評価する。
5. student-t検定により標本分布と生成した分布の平均の差があるかを評価
両側検定におけるp値は0.5853と0.0167を超えており、帰無仮説の「平均値に差はない」ということは棄却はできない。そのため、平均値に差がないとは否定できない。
95%信頼区間においても、 -2.437258 ~ 4.310232 平均差が0をまたいでおり、差がないだろうと評価する。
なお、計算した結果2008-12-17 ~2021-09-03のTECLの平均リターンと標準偏差は以下となった。
年間平均リターンは51.72047%、年間標準偏差は53.06213
月間平均リターンは3.535%、月間標準偏差は15.31772
考察
以上の1~5から、数値的には正規分布に従っていないとは言えないという結果、だが、視覚的には正規分布していそう、という結果だった。
そのため、生成した乱数の分布(標本から算出した平均、標準偏差の正規分布)とも差があるとは言えず、正規分布に従っていると思って差し支えないと考えられる。
そのため、TECLのシミュレーションを行う際に、正規分布による乱数発生を用いてモンテカルロシミュレーションをしても問題ないだろうと評価する。
ただし少し足りないか?サンプルサイズ370~380くらい?ほしいところだったが、現状データがないので今回は保留にする。
今後もいくつかの株式や投資信託でも確認を行っていきたい。
検証方法に問題があればコメントくださいませ。
よろしくお願いします。
以上。